請負として半導体工場で装置のメンテナンス業務をしていた頃の話をします。
工場勤務と聞くと生産ノルマがある単純作業と思われがちだけど、それはオペレーターの話。
組立やメンテナンスはパーツの組み上げや磨き作業もあるし、精神的にも疲れる仕事内容。
10年ほど前の話になるけど苦い体験で、オススメはできない業種です。
もし今この業界にいて続けるか悩んでいる場合は退職代行サービスを利用するのも一つの手です。
半導体って?
電気を通す伝導体と通さない絶縁体両方の性質を持った物質。
半分(semi)導体(conductor)だから「セミコンダクター」。
生活の中では車やスマホ、冷蔵庫や炊飯器などの家電、SuicaとかのICカードにも使われてます。
クレジットカードのICチップ(金色部分)も半導体です。
あらゆる端末機器に使われている為、モノのインターネット(IoT)が実現すると更に需要が高まると言われてます。
半導体工場勤務の特徴
製品を作るのはクリーンルームという工場内だけど、空間も勤務形態もちょっと特殊です。
大きな特徴は下記3点。
- クリーンルーム
- 交代制勤務
- 高単価
クリーンルーム
半導体製品を作る上での大敵はダスト(目に見えない小さなホコリ)なので、無菌状態に近いクリーンルームでの作業になります。
作業員もクリーンスーツを着用。フードかぶって薄手のグローブも付けるから露出してるのは目のまわりだけ。
マスクは最初息苦しいけど数日で慣れはします。エアシャワーを受けながら入室です。
ダストが多かったらどうなるの?
不良品の原因になるんだ。
室内に持ち込むペンや用紙も指定されるほど神経質。
女子も化粧禁止で、ヘアカラーNGな場合もあるみたい。
クリーンルーム外の様子は見えないの?
全然見えなくて閉塞感がある。
暑さ寒さは無いけどね。
交代制勤務
半導体は設備保全に大きなコストをかけているから、従業員に夜勤手当を出してでも装置はフル稼働させないといけません。
なので交代制でシフトを組む場合がほとんどで、夜勤有りなら3勤3休のケースが多いです。
当時所属してた会社は夜勤部隊が別にあったから日勤のみ。
メンテナンス内容によって夕方5時か夜7時まで、週1ペースで12時までのシフト。
休みは土日プラス平日1日の週3回でした。
時間で区切るというよりはメンテナンスが終わるまでが勤務時間です。
装置の不具合があれば、夜勤に引き継ぐか残るかで最悪朝方まで働く事も…
責任者になると深夜でも請負元から電話がかかってくるらしい…
装置は一年中稼働しているので大型連休は取りにくいのも半導体業界のネック。
装置に合わせたスケジュールなのに土日は休めるの?
全部で20台くらいの装置を受け持ってて、メンテナンス無しの日が土日にくるように日程調整してたみたい。
高単価
勤務時間は180時間くらいで、業界1年目の僕は額面22~23万、手取り18万くらいでした。
当時の最低賃金が自給650円程度という中で、時間給1,000円以上だったしコスパは悪くないです。
ただ請負元の社員さんのボーナス額を聞いたら空しくなります。(100万とかもらうみたい。)
半導体工場での1日
半導体工場のタイムスケジュールは以下。
7:30 夜勤組からの引継ぎ
8:00 作業開始(解体)
10:30~11:00 休憩
11:00~12:30 作業
12:30~14:00 昼休み
14:00~17:00 作業(組み上げ)
17:00~17:30 請負元へ作業完了報告・退社
※19:00までのシフトの場合は夕方休憩する。
こんな感じで、朝は工業地帯の渋滞をさけるために早かったです。
昼食は請負元の食堂を利用。
ちなみに支払いは専用のカードをリーダーに通すスタイル。自販機も同じで、使った分は給料から天引きされてました。
たくさんの人と仕事するの?
1台を2人でメンテナンスする体制だったよ。
装置の操作する人と、部品をバラシて磨きと組み上げする人。
半導体工場でのメンテナンス業務を辞めた理由
冒頭で書いたように、マシンオペレート(装置の操作)と比べてメンテナンス(組み上げ・クリーニング)はハード。
続けるならエンジニアになるという覚悟をもって方が良いです。
僕もたくさん失敗しました。
- 人の体に合った職場ではない
- 高価な精密機器を扱うのに気疲れする
- 相方と合わないとつらい
人の体に合った職場ではない
勤務時間の大半はクリーンルーム内で過ごします。
無機質な空間で、温度・気流・気圧は製品に合わせてるので、人の方が環境に合わせないといけません。
ヒ素やリン酸などの薬品も使ってるし、ボンベ付ける事もあります。
それと半導体製造装置は高電圧なので危険という認識を持ちましょう。
メンテナンス時のチェック項目に、アース棒で電気を取る作業があるはずなので飛ばしたらダメです。
感電した事例もあるので安全第一!万が一そんな事態に遭遇したら、ブレーカーを切る!グローブ付けた状態で電線を取り除く等、絶縁状態を確保するのが重要です。
身体に悪いって事?
身体にいいとは言えんね…
過去には健康被害のニュースもあった。
ブーツもゴム製だから感電した人は蹴り飛ばしちゃえば?
高電圧を受けたらゴム人間でも黒焦げ。
ルフィ対エネルみたいにはならんよ。
高価な精密機器を扱うので気疲れする
半導体製造装置は1台4億円とかするからパーツも高い。カーボン製は壊れやすいから細心の注意が必要です。
ミスしたら、5つの理由を挙げ、それぞれに3つの対策をつける「なぜなぜ分析シート」提出という苦行を経験。
請負という弱い立場だったからミスにはかなり敏感でした…
細い部品をうっかり落としてポキッと割ってしまい、その日はリーダー宅で「なぜなぜシート」作成し、月末の社内ミーティングで発表までがセット。(あまりにもくだらなくて、この時辞めると決めた)
相方と合わないとつらい
1台の装置に2人で付く体制の場合、新人だとキャリアのある人と組まされます。
新人2人、先輩1人、パワハラなリーダー1人の4人チームでした。
相方になるのは先輩 or パワハラリーダーなので憂鬱な日々。
こっちも仕事の要領が悪かったけど、いつも怒鳴ってくるし、一度肩パンチもくらいました。
謝っては来たけど、こういう人と働いていくのはマイナスしかないので環境を変えるべき。たとえ半導体業界に留まりたいとしても、大きなセミコンダクターのある地域には同業種の会社も多いです。
マシンメンテナンスの場合、基本同じ空間にいるので
自分と合わない人と組むとつらいです。
クリーンスーツで表情も見えないしコミュニケーションとりづらいんですよね…
半導体工場が合わないと思ったら
誰にでも向き不向きはあるし、半導体工場が合っている人もいるでしょう。
ただ、合わないと思ったらのなら辞めるべき。自分も辞めて良かったと今でも思います。先に挙げたパワハラ上司とは最終出勤日まで口も利かず重たい空気だったけど、今は退職代行サービスなんてものもあります。(使いたかった!)
体力的にもだけど精神的な負担がしんどかったし、鬱になる人も珍しくない業界。深手を負う前に撤退も考えて欲しいです。
まとめ
半導体工場でのメンテナンスは、精神的に疲れるのと、ものづくり的な面があるので適正も問われる仕事です。
オペレート業務だけならひたすら単調な作業の毎日。完全にルーティーン化されているから、自分なりに工夫する余地が無く、絶対に飽きます。
オペレーター、メンテナンスに関係なく、この記事であげた特徴(クリーンルームの雰囲気や交代制勤務)がデメリットになる人も多いです。
さいごに、この記事ではクリーンルーム内のメンテナンス業務で苦しんだ内容を書いたけど、半導体業界自体はディスってません。
もともと日本が世界をリードしていた分野で、新開発された酸化ガリウム半導体は、省エネ・低コストで現代の生活を変えると注目されてます。
コロナ禍で需要が高くなっているし、デバイス開発や回路設計を志す人にはチャンスがある業界でもあります。半導体業界に不満があれば電気系の求人ならリクナビNEXTなどで転職先候補をストックしておくのも賢い選択。
以上、参考になれば幸いです。
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