火力発電所への出張でボイラの後部煙道という部分の点検をした時の経験談になります。
後半には失敗談もあるので、これを読めば現地未経験の人や初心者さんはミスが減らせるはずです。
ボイラーってなに?
火力発電プラントを構成するメインの機器。
燃料を燃やすから高温・高圧力なんだ。
後部煙道は?
加熱器、再熱器、節炭器などと呼ばれている伝熱部分がある場所。
蒸気を作るためにあるよ。
ふーん、そこを点検しに行ったって事ね。
そう。過酷な環境で負荷が高いから定期的に点検するんだ。
ボイラの点検概要
今回は燃料を燃やす火炉の後に続く過熱器、再熱器、節炭器(後部煙道)の点検のため、現地へ出張してきました。
ボイラには「定期自主検査」という検査を定期的に行わないといけません。これは電気事業法で義務付けられています。
定期安全管理審査(台55条)
発電用のボイラー、タービン等で一定以上の圧力が加えられる部分があるものについては、金属材料の高温高圧蒸気又はガスによる損傷、腐食、材料の劣化等を生ずる可能性があり危険性が高いことから、設置者が定期的に自主検査を行い、その検査結果を記録することが義務付けられています。(定期自主検査)
また、定期自主検査の対象となっている電気工作物を設置する者は、自主検査の実施に係る体制について経済産業大臣又は登録安全管理審査機関が行う審査を受けることを規定しています。経済産業省HPより引用
現地出張の経緯
としては前年の定期点検時に減肉のあった後部煙道という部位の追跡調査になります。
それまで現地への出張経験はなく、OJTという立場で参加する事に。
業務内容は熊本県にある火力発電所へ出張し、2週間かけてボイラ点検作業を行うというもの。
ボイラ点検の目的
ボイラには配管が張り巡らされていています。これは管内を流れている水を火力で熱して発生した蒸気でタービンを回して発電させる仕組みのためです。
そのため管が損傷して漏洩などになったら運転停止に!
また、給水を加熱できなければボイラ効率は下がるのでコストは悪化。
つまり安全性と効率面からもボイラの定期点検は重要なのです。
実際のボイラ点検作業
後部煙道には節炭器、過熱器、再熱器等があるんですが、ひとかたまりの配管(パネル)が足場から吊り下がっている状態。
このパネルを足場からファイバースコープを差し込んで減肉しているか(最低限の厚さがあるか)や損傷具合を点検します。
ボイラ点検のスケジュール
点検日程は2週間。1日でやることは全体朝礼、現場での点検作業、事務所での資料作成です。
以下はざっくりしたタイムスケジュールだけど他の現地も大体同じです。朝は早く、帰り時間は資料作成が済んでからなので決まってません。
休日は基本的に日曜でした。
8時 外で全体朝礼、体操
8時20分 事務所で安全確認
9時00分 現場での点検作業
12時 昼休み
13時30分 現場での点検作業
16時 事務所での資料作成
19時 勤務終了
現場に入るまで
現地事務所に着いたらまず現地所長に挨拶(菓子折り持っていくのが通例)
健康診断書や派遣先の安全教育受講証明書のコピーを提出して、現地安全教育を受けたら早速作業場所に移動します。
ヘルメットや安全帯などの基本装備はもちろん、作業内容によって必要なものがあるので確認しましょう。今回はファイバースコープやボールペンを持っていきます。
誰に見られているか分からないので、道路横断時の指差呼称も気がけること。
現場についてからの点検作業
現場についたら点検作業の段取り確認。まずは点検箇所を見やすくするためにブローして積もった灰を除去します。
次に機器の準備。テープを使って棒にファイバースコープを括りつけて上から差し込むスタイルで管に減肉が無いか映像でチェック。問題ある箇所は写真を撮っていきます。
最後にチェックシートへの書き込み。映像の確認者が何番目×とか△とか口頭で伝えるのでそれを書き込んでいきます。
おそらく初心者が任されるとしたらこの作業なので、書き間違いがないように復唱して対応しましょう。
これを4人程度のグループで地道に一か所づつ確認していきます。
点検終了後の作業
点検が終わったら現地事務所に戻ってその日の作業結果を資料としてまとめます。
調査位置、判定結果、減肉部位の画像貼り付けなどです。資料を見る人が視覚的に分かりやすいよう画像は多めで箇条書きも駆使するのが大事。
ボイラ点検作業で失敗した点
今回記事にした内容は初めての点検作業だったんですが、もちろん失敗がありました。作業に限った失敗を紹介します。
現地派遣の前準備
現場の図面があるはずなので現地に行く前に配置や並びを確認、要チェックの部位はマーカで色付けするなどしてイメージしておきましょう。
これが出来ておらず、現場に入ったら右も左も分からず同僚にくっついてました。
点検用具の準備
今回は現場でもペンを使う内容だったけど、ヤッケのポケットから落としてしまいました。
下の階層まで取りに行ったけど、タイムロスになります。自分はOJTで付いてきたおまけ的な人材だったから良かったけど、人員が少なければ周りに迷惑をかけることに。
小さなアイテムにも落下防止ひもをつけるなど対策をしましょう。
あと機器の充電も任されることがあります。必ず忘れないよう現場から戻ったら真っ先にやりましょう。
点検報告書の作成要領
点検が終わったらその結果をまとめなければ帰れません。とはいっても初心者は時間がかかるもの。
自分も社のデータベースからpdfで確認はしていたものの、実際に作成しようとしたら理想通りには進みませんでした。
できればWordやExcelファイルを事前に入手しておこう。自分も先輩から別ユニットのファイルをもらって部分的に流用しました。
まとめ
点検自体は期間内に無事終わり、報告書も仕上がりました。損傷あった部分は客先へ次回点検時に交換推奨等をすることになります。
カーボンニュートラルもあって火力発電所の新設は無くなってきたけど、既存発電所の定期点検はマスト。
初心者は点検内容の確認、用具の周到な準備、流用できるデータの入手は必ずやって現地で困らないようにしておこう。
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